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2010年08月 アーカイブ

ゴッホの人生 3

9月10日付けの手紙のなかの次のような文章は、燃えあがるようなものと何かうそ冷たいものとがとけあっていて、ゴッホの心の姿をいたましいほどあざやかに示しています。


「人生はそのようにして過ぎてゆく、時は2度と帰って来ない。


しかし仕事をする機会が2度とないことを知っておればこそ、なおさらぼくは仕事に夢中になっている。


ぼくの場合はとくにもっと激しい発作が起きれば、永遠に絵を描く能力がダメになってしまうかもしれなのだ。


発作の最中に苦痛と苦悶を前にして、ぼくは気力がなくなる感じがする。


・・・必要以上に無気力になるのだ。


しかし、以前は治りたいとは思わなかったのに、恐らくこの精神的な無気力そのもののせいか、いまは2人分も食べ、猛烈に仕事をし、他の病人との関係から、またぶり返すことを恐れて、じゃんじゃん食べる・・・


とまれ自殺をしようと思っていた男が、もう1度岸にはいあがろうとするように、ぼくは今、治ろうとしているのだ」。


ゴッホの人生 4

続いてゴッホは、南仏にやって来た理由に触れ、


「ちがった光を見たいと思ったし、いっそう明るい空の下で自然を眺めたなら、日本の版画の感じや描き方がいっそう正確にわかるだろうと思った。


最後に、もっと強烈な太陽を見たいと思った」


・・・というふうに要約していますが、南仏への愛着はなおも執拗に続いてはいるものの、一方で、北へ帰りたいという欲求が、次第にその力を増してゆくようです。


最初の頃は、


「じっさい、ここにいると気楽だし、なぜパリやパリの近郊に下宿を移さねばならないのか、その理由がとんとわからない」と言っていたゴッホは、やがて、


「北欧にいた頃のようなパレットで、またやってみたい欲求」や、「友人たちに会いたい、北仏の田舎をもう1度見たいという欲求」を口にするようになります。


もちろん、これは、「北仏」だけをさしているのではなく、その背後で、故郷オランダが、この孤独な画家を呼んでいるのです。


彼は、翌90年4月29日付けの手紙で、テオに、『馬鈴薯を喰う人びと』や『ヌエネンの古い教会』など、ヌエネン時代の作品を描き直してみたいと言っていますが、これからも、そういう心の動きを察することが出来ます。


5月中旬、ゴッホはサン・レミを去り、17日土曜日、パリのテオの家に着きました。

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