ゴッホの人生 6
ゴッホは書きました。
「ぼくはよく坊やのことを考える。
絵を描くのに全神経を傾けすりへらすよりは、確かに子供を育てる方がいいことだと思うが、今さら仕方がない。
ぼくはもう・・・少くともそんな感じがするのだが・・・
年をとりすぎて引き返すこともならず、また他のことを望むことも出来ない。
そういう欲望はなくなったが、それでも精神的な苦痛は心に残っている」。
彼は、故郷オランダを思わせる、はるかにひろがった麦畑をくりかえし描きます。
この時期の彼の作品は、たとえば『オーヴェールの教会』や『鴉のいる麦畑』のような、サン・レミ時代の作風を受けつぎ、徹底的に追いつめた作品と並んで、不吉な空虚のしみとおった妙に白っぽい色調の作品が見られます。
それはそのまま、彼のこの時期の心のありようを示していると言っていいでしょう。
彼は、その種の作品のひとつについて、
「これは、今にも嵐の来そうな空の下の広表たる麦畑で、ぼくは思い切って悲しみや極度の孤独を表現してみようとしてみた」と語っていますが、この「悲しみ」も「極度の孤独」も、もはや、直接心に突きささるものでありません。